YAPC::Kyotoに参加してきた - 自分の原点を思い出すカンファレンス

3/19(日)開催のYAPC::Kyoto 2023にオフラインで参加してきた。最後にYAPCに参加したのはYAPC::Asia 2015なので、8年ぶりのYAPCだった。自分が登壇しないテックカンファレンスにオフライン参加すること自体がこれまでにほとんどなく、カンファレンスの醍醐味の一つである人とのネットワーキングにはじめて集中できたかもしれない。特に、京都開催ということもあり、前職のはてなの関係者の方々がex含めて多数参加されていたので、終始はてな同窓会気分だった。自分は相変わらず京都に住んでいるので、近場でカンファレンスに参加できてありがたかった。

印象に残ったトーク

廊下やブースで話してばかりで、あまり集中して聴けたトークが少なかったのだけれど、YAPCらしい、フロントからインフラまでWebアプリケーション開発に関する伝統的な技術スタックの話と、ハッカーコミュニティの歴史が感じられる独特の雰囲気のあるよいトークが多かったように思う。

ジョブキューシステムFireworqのアーキテクチャ設計と運用時のベストプラクティス @tarao

ジョブキューシステムFireworqのアーキテクチャ設計と運用時のベストプラクティス - Speaker Deck

KRPで周辺で迷っていたら、なんとトーク終了にも間に合わなかった...。

Fireworqの初期設計者の一人としては、はてなの開発合宿での開発開始から8年以上経過して実運用実績も積んで陽の目をみていることを嬉しい。Fireworqのアーキテクチャ設計の検討記録をブログに残していて、おそらく参照してもらっていたと思うので、当時書き残しておいてよかった。GoとMySQLを用いたジョブキューシステムを作るときに考えたこと - ゆううきブログ

トーク後でtaraoさんに聞いたところ、ジョブの特性に応じて複数のキューを使い分ける機能は、はてなブックマークで実際に使われているとのことだった。当時少しオーバースペックかなと思っていた機能がちゃんと意味があって実用されていてよかった。

qron: Cloud Native Cron Alternativeの今 @aereal

qron: Cloud Native Cron Alternativeの今 - Speaker Deck

ジョブの登録・呼び出しインターフェイスとジョブスケジューリング機構をStep FunctionsとDynamoDB、Exactly onceのイベント発火をCloudWatch Events、が担う、サーバーレスアーキテクチャで定期ジョブスケジューラーだと理解した。

前述のFireworqやaerealさんが以前担当されていたはてなブログの常時HTTPS配信アーキテクチャが背景として透けてみえる非常に”らしい”話だったと思う。

以前サーバーレスアーキテクチャでデータ指向アプリケーションを組む取り組みをしていたこともあり、こういう話はとても好き。時系列データベースという概念をクラウドの技で再構築する

あの日ハッカーに憧れた自分が、「ハッカーの呪縛」から解き放たれるまで @ar_tama

あの日ハッカーに憧れた自分が、「ハッカーの呪縛」から解き放たれるまで - Speaker Deck

廊下での話で盛り上がってしまったため、直接の聴講はかなわなかったけど、スライドを拝見して、学生のころにハッカーに憧れた気持ちを思い出した。ハッカーの特徴を抽出し、解釈し直して、今もハッカーで居続けるにはとリフレーミングされている内容だと理解した。参加者の多くの方の共感をよぶとてもよい発表だと思った。

コードを高速に書いてみんなに使われるソフトウェアを爆速で生み出すいかにもハッカーらしい貢献は、どうも自分には難しいと思いながらも、エンジニアリングを突き詰めたくて、「コード」よりも「知」の世界で貢献しようと思い、さらに「ブログ」から「論文」を書くようになったのだった。*1

ar_tamaさんは以前からウェブ上で存じ上げていたのだけど、偶然はじめて挨拶できた。ご本人に聞くところによると、今回の発表では、スライドの書き出しがなかなか難しく、ChatGPTと対話しながらスライドを作成されたとのことで、自分も同等の使い方を試してみようかなと思った。

@nekokakさんのゲストトーク

トークの序盤で00年代にPerlハッカーへの憧れからPerlの世界に入られた経緯を語られていて、その背中を、さらに自分のような10年代世代が見てきたコミュニティの歴史の連鎖を感じた。nekokakさんのPerlのO/RマッパーであるTengには10年前にお世話になり、リスペクトでCotengというCPANモジュールを作っていたことを唐突に思い出した。とにかくややこしいことをしない ORM がほしくて Coteng とかいうCPANモジュールを作った - ゆううきブログ

YAPC::Kyoto 2023 Keynote @onishi

YAPC::Kyoto 2023 Keynote - Speaker Deck

onishiさんによる、はてなとPerlとPerlコミュニティを振り返る話。はてなインターンとアルバイトを経由して、新卒ではてなに入社した身としては、感情の昂りを抑えることが難しい感動的なトークだった。はてなの全サービスのインフラとMackerelを中心に、自分のできる限りを尽くしてはてなに貢献できるように頑張っていたころを思い出した。

自分がこの世界に入ったのは、はてなインターンだけがきっかけで、転職したからこそわかるのだけど、はてなではアルバイトを含めて6年の勤務だけだったとは思えない濃密な経験をさせてもらって、onishiさんが育ててこられた土台の上で、今もやれているのだなと改めて感謝したい。

忘れていたエンジニアを志したあのころ

ここ数年はアカデミアで研究者として活動していたこともあり、エンジニアを志していたころのことはすっかり忘れてしまっていた。Perlは7年ぐらい書いてないし、その前でもCPANモジュールをいくつか公開したり、YAPC::Asiaに2回登壇したくらいで、Perlコミュニティへの貢献はほとんどなにもしていない。そのため、Perlコミュニティに関する思い出はそれほど多くないのだけど、新卒のころの就職活動では、Perlの会社を中心に探していたし、YAPC::Kyotoで参照されていたPerlハッカーの名前は、面識のある方こそ少ないけど、わからない名前はほとんどなかった。

カンファレンス中には、ハッカー同士で最近の互いのGitHubのPRについて議論されていたり、PRではやり取りしてたけどカンファレンスではじめて邂逅していた若者たちがいたり、ああそういえばこういう空気感だったな、今はすこし遠いところに来たかもなと感慨深くなった。*2

Perlのコミュニティやはてなのカルチャーに影響を強く受けて憧れていた自分の原点を久しぶりに思い出し、その原点と今とのつながりも再確認できたので、またこれから頑張ろうと思う。

*1:OSSによる貢献もまだ諦めてないので、博士号を取り終えたらなんとか...

*2:アカデミアの研究会にも類似の空気感はあるのだけど、同分野で自分と近い世代の研究者がコミュニティにはほとんどいない。